まえがき
今までフィラメントを保管するのに、ナカバヤシのドライボックスDB-27L-Wを使っていました。このケースは27Lも容量があって、一般的な1Kgのフィラメントなら6~8本くらい入ります。しかしフィラメントを交換するたびにふたを開けて出し入れするのも結構面倒ですし、つい開けっ放しにして乾燥材が吸湿してしまう問題もありました。
そこで今回は、3Dプリンター界隈では有名なダイソーの5.5L密封容器を使って、フィラメントを1本ずつ入れるためのドライボックスを作ることにしました。
ダイソー 5.5L密封容器の良さ
ズバリ、値段です。フィラメントがちょうど入る大きさで気密性が高いケースが、なんと300円で買えるのが素晴らしいです。しっかり閉められて丈夫なので最適です。
必要なパーツ
3Dプリントするもの以外に必要なパーツは以下の通りです。リンク先は今回購入した商品のURLです。
- ベアリング 608ZZ 2個 LINK
- 温湿度計 LINK
- ダイソー 密封容器5.5L LINK
- ねじ、ナット Φ3mm 6~10mm
- 坂本石灰工業所 なんでも除湿シリカゲル1KG LINK
- 不織布ティーパック LINK
(リンクはアフィ無しですのでご安心ください)
ドライボックスの製作
パーツは Thingiverse にアップしました。ダウンロードしてプリントします。D55L_Foot_long.stlと_shortは足のパーツなので、こちらは2個ずつプリントします。
パーツのファイル名一覧
組み立て
はじめに軸受け(D55L_Holder1.stl)をケースに取り付けます。ダイソーのケースの底の中心に突起がありますので、その突起とパーツの窪みを合わせるように(乗り上げすぎないように注意)位置決めをして、テープで固定します。
裏返して穴を開ける位置をマジックでマーキングして、ドリルで穴を開けます。ドリルで穴を開けたらねじ止めします。
次は軸受けを支えるパーツ(D55L_Holder2.stl)をフタに取り付けます。これはケース側と位置を合わせる必要があるので、先ほどの軸受けに被せてテープで固定します。
その上からフタを固定して、マジックで穴開け位置をマーキングして、ドリルで穴を開けたらねじ止めします。
次は底面あたる面に足を付けていきます。このケース、この部分が若干斜めになっているので、ここを基準にすると実際に立てたときに斜めに仕上がっちゃうんですよね。なので先に足を付けておくといいかもです。別に順番は自由でいいです。
フタに近い側は D55L_Foot_short.stl 、奥側は D55L_Foot_long.stl です。
ローラー(D55L_Roller.stl)にベアリングを取り付けます。その前に、ベアリングの穴に入れる部分をやすりで削ります。設計データではΦ8mmですが実際にはそうはならないので、はみ出た部分などを削っていきます。
削ったらハンマーでローラーを叩きながら填め込んでいきます。
ローラーが完成したら軸受けに填め込みます。少し力が必要なので、下から手で押さえながら入れましょう。(じゃないとケースが割れるよ)
お次は温湿度計(D55L_SensorFrame.stl)、位置決めしてドリルで穴を穴を開けます。
温湿度計を穴に押し込むとカチッとはまります。固定したらケースにねじ止めします。このAmazonで売ってる激安温湿度計、かなり不良品が混ざってるので、8個入りとかを買ってしばらく同じ環境に置いておいて、値が異常なやつを捨てるという運用をした方がいいです。1個とか2個とかだと正常なのか不良なのかわからないですからね。
最後にフィラメントの取り出し口を取り付けます。場所は自分が使いやすい場所でいいです。このパーツは内側と外側から挟み込む構造になってます。内側のチューブを固定するパーツは2種類あって、D55L_Tube_narrow.stlとD55L_Tube_wide.stlと太さが若干違います。出してみないとわからないので、とりあえず両方プリントして、手持ちのチューブに合う方を使ってみてください。
もう片方のパーツはD55L_TubeCover.stlです。真ん中の穴が大きいのでちょっと加工が面倒ですね。私は3.2mmのドリルで穴を開けたあと、リーマで広げました。
安くて手軽で強力な乾燥剤
ケースが完成したら中に入れる乾燥剤を用意します。乾燥剤って買うと結構高いんですが、この坂本石灰工業所のシリカゲルは1Kgも入って送料込み798円というバグった価格をしてます。これを紅茶用のティーパックに入れて、袋を縛れば完成!紐がほどけないようにテープで固定しました。
1Kgの写真の乾燥剤が10個作れます。注意点としては、ティーパックと間違えてティーバックとAmazonで検索すると大変なことになるので、ご家庭や職場では気を付けましょう。検索履歴を消すのも忘れずに。
完成!
1個あたりの予算1500円以下でドライボックスが作れました!
以下、余談
この形に行きつくまでには何度も試行錯誤を繰り返しました。最初はスプールを中央で吊るす方式ではなく、下側のローラーで転がす方式でした。
しかし実際に作ってみるとすごく重い。フィラメントを引っ張ってもスルスルとはならず、ガ・ゴゴゴゴゴみたいな感じです。
これは推測ですが、スプールが紙製なので自身の重みで歪み、ローラーの間に食い込み、その結果ローラーの摩擦を生んでしまったのではないかと思ってます。そう考えると2点で支えるとその間に入り込んでしまうので、1点で支える方式に変えることにしました。
隙間から湿気が入り込まないか?
チューブやネジ穴のわずかな隙間があっても、中が湿気ってしまうことはありませんでした。外が35%前後のとき、表示値は下限(?)の10%でした。今は乾燥した季節なのではっきりとしたことはわかりませんが、そこまで気密性を気にする必要はなさそうです。
本当に作りたかったもの
本当は棚に収めたケースからチューブを伸ばして、3Dプリンターにフィラメントを供給するこの形でした。フィラメントを変えるときに、手元のチューブだけ入れ替えればいいのでとっても楽です。
しかしこの方法では、フィラメントによっては押出不良が出るようになりました。実際にフィラメント手で引っ張ってみるととても重いのです。PTFEチューブのカーブの半径をなるべく大きくするように引き回したところ、この問題はかなり改善しました。ところがフィラメントによっては回転するようねじられた状態で巻かれている製品があり、経路が長いとその摩擦が強く影響してしまうようなのです。
そこで、やむを得ず変更したのがこの形。フィラメントを交換するたびに持ち運ぶ必要があります。
でもドライボックスに入ったままの状態なので、今までのような手間はなくなりますね。これ、本当はフィラメントの取り出し口を上に持っていきたかったんですけど、そうすると引っかかって棚に置けなくなってしまいます。
AMS付きの3Dプリンター買えばいいじゃん?
Bambu Labの3Dプリンター欲しい!
ソフト上でフィラメントの交換ができる夢のような3Dプリンターですよね。多色印刷もできて、しかもこのAMSは増設することで16色まで対応できるそうですから素晴らしいです。しかし私はまだ購入は様子見をしています。
理由はヘッドが1つだけだから。一層プリントするごとにフィラメントを交換するから、大量の無駄なフィラメントがゴミとして排出されるんです。今後2ヘッドorマルチヘッドの製品が出ると思うので、(家庭向けの)高級機種買うならそれからかなぁって思ってます。まぁ多色印刷する機会はあまりなさそうですが。デュアルヘッド&AMSを本命として狙ってます。
次への抱負
正直現在のバージョンはあまり満足していません。本当はフィラメントを棚に置いたまま使いたかったからです。引く力が重すぎて造形不良になる問題を解決しなくてはなりません。フィラメントが引っ張られたらモーターで少し多めに送り出す機構とか、バッファーを設けたりしてみました。
しかし結局採用には至りませんでした。理由はめんどくさいから。今回の目的は簡単にフィラメントの交換することで、この方法では毎回この自動送り機のエクストルーダーにフィラメントを挟んで送り出して、このループの中をぐるっと通さなくてはなりません。かなり時間をかけてここまで作ったものの、本当に使いやすいのか?という点でボツになりました。