シリーズ『1ボタンだけのワイヤレスキーボード』、次はプリント基板について書いていきたいと思います。
1ボタンだけのワイヤレスキーボード
(1) 準備編
(2) プリント基板の製作編 ←いまここ
(3) ファームウェアの作成編
(4) ケースとキーキャップの製作編
当初は空中配線の計画だった
BLEキーボードを作成するにあたって使用する部品は以下の3点のみです。
・XIAO nRF52840
・キースイッチ
・電池ボックス
配線も4本しか必要なく、特にプリント基板を使用する必要もありませんので、XIAO nRF52840に直接はんだ付けをする計画でした。電池ボックスは既製品だとどうしても大きくなってしまうため、20x25mmのサイズに収まる電池ボックスを3Dプリンターで自作しました。
これを空中配線すればとてもコンパクトに収まります。
これでいけると思っていたのですが、実際に使ってみると接触不良で電源が入ったり切れたりすることが多発しました。クッションを加えて接点に接触しやすいようにしてみたものの、やはり動作は不安定でした。
仕方ない、簡単なプリント基板でも起こすかぁ~。
このときはまだ、これがとても長い道のりになることを知りませんでした。。。
EasyEDAを試す
EasyEDAというWebブラウザ上で回路図を作成してプリント基板を設計、そのままJCLPCBに発注できる超絶便利なサービスがあります。まずは練習で、チュートリアル動画を見ながらサンプル基板の作成をしていくと、驚くほど簡単に注文画面まで進めました。これを使えばこんな部品点数が少ない基板なんて簡単に作れると思ってました。
そしていざオリジナル基板を作ろうとすると…
「ライブラリの部品多すぎて何使えばいいかわかんねー」
「フットプリントが基板に入りきらない場合どうしたら??」
「このライブラリ、シンボルのみでフットプリント付いてないじゃん」
「基板の面付けとかVカットとかどうやるの??」
チュートリアルやって完全に理解した気分になっただけでした。基本操作が何もわかってません。
KiCadを覚えよう
基本が何もわかってなかったので、プリント基板の作成をゼロから勉強することにします。今回購入したテキストはKosaka.Lab.さんのKiCad 8 入門実習テキスト『KiCad Basics for 8.0』という本です。
この本、すごくわかりやすいです。はじめてKiCadに触れる人間がつまづきやすいところがしっかりとフォローされていて、初心者が何がわからないかをわかって書いてるなぁと感心しました。
使用パーツ一覧
・Seeed Studio XIAO nRF52840
・BC-2001 CR2032電池ホルダー
・Gateron KS-33 Low Profile Switch
回路図の作成
回路図といってもXIAO nRF52840と電池ホルダー、スイッチ用の接点だけの回路です。
XIAO nRF52840のシンボルやフットプリントはSeeedのwikiページだったか、SnapMagicだったか忘れてしまいましたが、ネットからダウンロードしました。KiCadのライブラリに無いデータを取り込む方法も先ほどの本で説明されていたおかげで、無事に取り込むことができました。
今回は20x25mmの基板に収めるため、フットプリントのはみ出る部分をカットしました。
同様に電池ホルダーのカットしています。
実際のパーツはこのように足が横に伸びているのですが、このままでははみ出てしまうので、足はニッパーでカットして使用します。
基板の作成
部品点数が少ないので特に難しい箇所はないのですが、20x25mmに収めたいという目標を達成するために、フットプリントの調整に苦労しました。
なんとか目標のサイズ内に収まりました。電池ホルダーのはんだ付け箇所が小さいので、強度的には不安があります。そのうえ表面実装ですから剥がれてしまいそうですね。まぁ何事も試してみなければわからないので、とりあえずこのままいきます。
KiCadで3D表示。なかなか良くできたソフトですね。こんな感じで基板の完成です。あとはこれを面付けして、基板製作会社に発注します。
FusionPCBに発注
本当はJLCPCBに発注するつもりだったんですが、あの本ではFusionPCBで発注するためのデザインルールで説明を進めていたので、説明通りにFusionPCBに発注することにしました。
FusionPCBの基板の最小サイズは10x10cmなので、20x25mmの基板を4×5枚並べて面付けしました。値段が最低の枚数が10枚なので、これを10枚発注します。正直1枚でいいんですが。価格は748円。送料入れても900円未満です。
発注して5日で製造が終わりました。早いのに安い!吉野家か!しかしここで一つ失敗をしました。送料をケチって一番安いのにしたら滅茶苦茶時間がかかり、届くまで10日もかかりました。
基板到着!
発注から待つこと15日、ついに発注した基板が届きました。自分が設計した通りのものが出来上がるのって感動ですね。
リフロー(はんだ付け)
今回XIAO nRF52840は基板に表面実装するため、中華ミニホットプレートを買いました。価格は$11です。
あまりに安いのでちゃんと使えるのか、正しい温度が出るのか心配でしたが、サーモカメラで確認したところ設定どおりの温度が出ていました。
今回は融点が138℃のクリーム半田を使って、XIAO nRF52840を実装します。
ステンシルの作成
端子に正確にはんだを盛るために、ステンシルを3Dプリンターで作成しました。作り方は簡単で、KiCadでソルダーマスクをDXF形式で出力し、Fusion360にエクスポート、あとは普通に3Dプリント用のデータを作るだけです。
何度か練習をしたのち、実際にXIAO nRF52840を乗せて表面実装をしてみました。ホットプレートを使って表面実装を行うのは初めてだったので、うまくはんだ付けできるのか、壊してしまわないか心配でしたが、期待通りに仕上がりました。
電池ホルダーの取り付け
電池ホルダーは普通にはんだ付けをします。強度的には弱いので、次回政策の際はスルーホールのホルダーにしようと思います。
完成!
電池込みで20x25mmのBluetooth端末ができました!ちゃんとLEDも光っているのがわかります。右のM5StackでBLEのデータを受信しています。
ダウンロード
KiCadのデータとステンシルの3Dモデルは、以下のGitHubのページからダウンロードできます。
https://github.com/kaz-mac/xiao_1key_blekey
まとめ
ということで、基板設計ソフトの使い方を習得するという想定外の遠回りをすることになりましたが、無事に目的の基板が作れてよかったです。今回オリジナル基板の作り方を覚えることができたので、これは今後にも生かせそうです。KiCad 8 入門実習テキスト『KiCad Basics for 8.0』は本当に素晴らしい本です。基板を作りたい人が最初に読むべき本。おすすめです。次はシリーズ第3回のケースとキーキャップの製作に進みます。
1ボタンだけのワイヤレスキーボード
(1) 準備編
(2) プリント基板の製作編 ←いまここ
(3) ファームウェアの作成編
(4) ケースとキーキャップの製作編
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