現金がデジタル通貨に変わるとき
もうすぐ平成が終わろうとしているのに、日本ではほとんどの人が現金を使って支払いをしています。Suicaのような電子マネーも普及してきていますが、全ての年代の人が使っているわけではありません。使用できる場所も全体から見たらほんのごく一部です。
最近ではPayPayのようなQRコード決済が登場しはじめています。色々な会社から「なんとかPay」みたいなのがうじゃうじゃ出てきて、どちらかというと、ポイントカードに決済機能が付いたような感じですね。これも日常的にスマホを使う世代向けで、スマホを持たない世代にはハードルが高いと思います。
このままこの先何十年も現金が使われていくのでしょうか?スーパーのレジでジジババお年寄りが財布から1枚1枚取り出し終わるまで何分も待たないといけないのでしょうか?
私の予想では、あるときに、一気にデジタル通貨への切り替えが始まる思ってます。何百年も続いてきた紙幣/硬貨の文化から大転換するのは相当大変な事のように思えます。でもそれができそうだと思うのは、過去にテレビのデジタル化に成功したからです。
日本中のテレビをデジタル対応しなければ映らなくなるという、ほとんど全ての人に影響があるものを変えられた。つまり、政府が本気でやる気になれば何だってできるのです。逆にマイナンバーがうまくいってないのは、中途半端なことやってるからダメなんです。確定申告書にマイナンバー書くのに、別途本人を証明するための書類を添付するとかバッカじゃないの?って感じですよね!w
デジタル通貨に求められるもの
誰でも使えること
デジタル通貨といっても、紙幣や硬貨といったお金の物理的な形が変わったにすぎません。幼稚園児や100歳の老人がお金を支払うために、スマホを操作させるというのは無理があるでしょう。お金は年齢やITリテラシーの有無に関係無く扱えなければいけません。
どこでも使えること
ICカード決済やQRコード決済は、現金を持ち歩かなくても支払いができるのがメリットです。しかし、実際の残高を管理しているのは手持ちのカードやスマホではなく、それを発行している会社のデータベースです。そのため支払い/受け取り時はそのデータベースと通信が発生します。(全てそうは限りませんが)
昨年SoftBankの回線障害やPayPayのシステム障害でその影響が浮き彫りになりました。電波が入らないと何もでききない。事業者のシステムが止まったら何もできない。自然災害が多い日本ではいつ何が起こるかわかりません。デジタル通貨となっても、場所や状況を問わず、紙幣や硬貨と同じように扱えなければいけません。
安全であること
デジタル化したことで、他人に盗まれたりするリスクは上がります。逆にデジタル化したことで、お金の流れを追跡することも可能になります。警察が犯人を特定して盗んだお金を引き出せなくしたり、取り戻したりといった事も技術的に可能なはずです。デメリットもあればメリットも大きく、その透明性によって安全性は現在よりも向上すると考えます。ただし一部には現金の匿名性を求める人もいるかもしれません。
仮想通貨じゃだめなのか?
仮想通貨バブルと崩壊
私も2017年頃は、ビットコインが世界の共通通貨になる!と本気で思っていた次期もありました。しかし2017年〜2018年初めのバブルは、小さなマーケットに投機マネーが流れ込んだことによってバブルが発生。その後は縮小し、仮想通貨が世界の共通通貨になる可能性は低いと思ってます。
普通の人は非中央集権に不安を感じてる
私みたいに中央銀行によって発行・管理されているお金を嫌ってる人にとって、非中央集権的な仮想通貨は夢のような通貨です。しかし特定の管理者がいない非中央集権の仮想通貨に不安を感じる人は少なくないようです。そんな私も非中央集権にも解決すべき問題があると感じています。
特にそう感じたのは2017年夏のビットコインのハードフォーク騒動です。仮想通貨はあらかじめ決められたルールで動いています。それを守っているのは(PoWの場合)マイナーであったり、個々に動作しているプログラムです。しかし中央の管理者がいないために、しばしば意見の対立が起こります。最終的にはそれぞれの勢力の力比べとなって分裂してしまいます。
2017年夏のハードフォーク騒動のときは最終的に最悪の事態(価値の消滅)は回避され、ビットコインとビットコインキャッシュという2種類に分裂しました。しかし2018年になると、今度はビットコインキャッシュで騒動が起こり、ABCとSVの2つに分裂しました。
あらかじめ決められたルールで動いているはずの仮想通貨が、このように力(≒事実上資金力)でルール変えられてしまう現実を見ると、結局中央集権と変わらないじゃないかという印象を受けます。
普通の人は価格の変動を好まない
1杯1000円のラーメンがあったとします。手元には1000円札があります。これでラーメンを1杯食べられます。次の日も、その次の日も、1000円札が1枚あればラーメンが1杯食べられます。1年後はもしかしたら1杯1050円に値上がりしているかもしれません。この場合1年で5%の値上がり、お金の価値は約5%下がったことになります。
たとえばビットコインの場合、日常的に±5%の変動は発生し、±10%動くこともザラ、時には±20%動くような時もあります。そうなると12時にラーメン屋に入った人はラーメン大盛りと餃子が食べられたのに、13時にラーメン屋に入った人はラーメン並盛りしか食べられないかもしれません。
このように価値が変動する通貨は支払い手段としてとても不便です。全ての人が同じ通貨を使う事で価格の変動は無くなりますが、「だったら円でいいんじゃない?」と考えるのが普通ではないかと思います。
ステーブルコインに未来を感じる
仮想通貨の中には、ステーブルコインという、ちょっと変わった特徴を持つ仮想通貨があります。ステーブルコインはドルや円といった法定通貨にペッグしたコインで、預け入れた法定通貨を担保として発行される仮想通貨のことです。
たとえばUSDxという仮想通貨の場合、米ドルを1ドル預けると、1 USDxが発行されます。その1 USDxで買い物をしたとします。代金を受け取ったお店はUSDx社に1 USDxを渡すと1ドルの米ドルが帰ってきます。(実際には手数料もかかるはずです)
このように法定通貨と1対1で対応していることで、価値が変動しないメリットがあり、裏付けされた価値が存在することで元本が保証されるメリットがあります(あくまで理想論です)。そして仮想通貨であることから、仮想通貨のメリットである高速で簡単な送金でき、安価で安全に国を超えた送金が可能になります。
ステーブルコインが世界共通通貨になるとまでは思いませんが、今後は投資/投機としての仮想通貨と、実需(送金/決済)としての仮想通貨に分かれていくと思います。
デジタル通貨の形
話が脱線してしまったのでデジタル通貨の話に戻しましょう。デジタル通貨なのでお金としても形は存在しませんが、人間が使う以上、インターフェースとして形が必要です。私はこんな「デジタル通貨カード」を想像してみました。
デジタル通貨カード
ダサっ!
いいんです。(^^;;) 大切なのは子供でも老人でも使えること。わかりやすいものはダサいんです。別にこれ1種類ではなく、スマホ版だったり、腕時計版だったり、高額の保管用に金庫式のものなど、バリュエーションがあっていいはずです。上からシートを貼ってデザインを変えられたりできると面白いかも。
デジタル通貨カードの機能
デジタル通貨カードはクレジットカードと同じ大きさで、厚さも同じくらいです。ディスプレイはペーパーディスプレイで、残高ボタンを押すと残高が表示されます。ジャパンネット銀行のワンタイムパスワードカードみたいな感じです。
送金はカード単体で行える(←これ重要)
カード単体で通信機能を持っており、残高の情報もカード内に保存されています。こうすることで電波が入らない所でも使用でき、ICカードリーダーのような端末が無くても誰でも送金ができます。
この誰でもお金を渡したり受け取ったりできることが、とても重要だと考えます。紙幣や硬貨のような現金ならできることだからです。
そして受け渡しできる金額に上限を設けるべきではありません。紛失したら大変だ!→そうかもしれませんがそれは現金でも同じ事です。犯罪に使われるかもしれない!→そうかもしれませんがそれは現金でも同じ事です。
ATMは無くならない
現金を引き出したり預け入れたりするATMは、デジタル通貨カードの時代になっても形を変えて存在します。デジタル通貨カードは単体で通信機能をもっているとはいえ、通信できる範囲は数cmです。カードに入金したり(=お金を引き出す)、カードから出金する(=お金を預金する)には、ATMを使います。
スマホの通信機能を使って、「パーソナルATM」も登場するでしょう。銀行に行かなくてもお金を下ろしたりすることができます。スマホが使えない世代は従来のように、使える世代は今よりもっと便利になります。
デジタル通貨カードの使い方
買い物編
この頃にはレジは無人化していて、カゴを台の上に置くと自動的に精算されるようになっているかもしれません。小規模な店舗や出店などでは人が端末を操作することになるかもしれませんが、代金の支払方法は同じです。
- 店:商品を精算し、端末に請求額をセットする。
- 客:ICカードリーダーにデジタル通貨カードを置く。
- 客:すると金額が表示されるので決定ボタンを押す。
フリマ、割り勘、お小遣い編
ICカードリーダーを持たない個人同士の受け渡しの場合は、デジタル通貨カード同士の通信機能を使います。
- 子供:デジタル通貨カードの受取ボタンを押す
- 親:デジタル通貨カードの支払ボタンを押し、金額を入力する
- 親:子供のカードの上に重ねて、決定ボタンを押す。
セキュリティ機能
基本的に現金と同じ扱いなので、無くしたら無くなりますし、盗まれたら勝手に使われます。しかしデジタルだからこそ、セキュリティ機能を持たせることも可能です。
支払時に暗証番号が設定できれば、勝手に使われる心配はありません。もちろん盗まれてしまえば返ってきませんけど、使えないとわかっているものを盗む人は現金のときより減るはずです。
また同様に多段階認証も可能でしょう。生体認証と組み合わせて、生体認証使用時なら無制限、生体認証未使用なら○円までと自分で設定できるようになれば、セキュリティに不安がある人でも安心ですね。
デジタル通貨カードの普及に必要なこと
全ての国民にデジタル通貨カードを配布する
全ての国民が持たないと意味がありません。そのためには国民1人あたり5枚配布して、必要な人には追加費用無しで枚数を増やせるようにすること。カードは初期状態では匿名で使用でき、ATMを使用する場合は一度銀行口座との紐付けを行う(ATMで入出金すれば勝手に紐付く)。こうすることでカード同士のやりとりなら従来の現金と同じように使え、ATMを使用すれば個人情報が紐付くので犯罪対策にもなります。
間違っても、デジタル通貨カードを市役所に行って申請するなんて方法をとってはいけません。マイナンバーの失敗を見れば明らかです。誰が時間をかけて役所行って、申請書書いて、身分証明してまで受け取るでしょうか。街でポケットティッシュ配るくらい簡単に、ばらまいちゃえばいいんです。デジタル通貨カードはお金じゃなくて、入れ物なんですから。
全ての商店にICカードリーダーと通信環境を無償提供する
受け取る側も重要です。大小規模を問わず日本中全てのお店や、必要な人全てにICカードリーダーと通信環境を無償提供します。POSの改修費用も補助。そんなことしたら既存のカード会社は大変でしょうけど、ポイント還元などで差別化して生き残れないでしょうか。
事業者は必ず銀行口座と紐付く形にして、売上金の受け取りはその銀行口座に振り込まれるようにしたり、現金と同じように扱えるようにするためには、ICカードリーダーに挿した”お店用のデジタル通貨カード”内にプールさせて、後から定期的にデータを送信する方法もあるかもしれません。
決済手数料は無料
現金なら100円払ってもお店が手数料を払うこともありません。お小遣いに100円あげたら受取額が99円になることもありません。それと同じようにしなくてはいけないので、手数料をかけてはいけません。
運営費用は税金
運営は新日本銀行、実質的に政府が運営しています。手数料は無料といっても、実際は「税金」という名の手数料がかかっていることをほとんどの国民は気付いていません。ちなみに関係ないですが、新日本銀行と書いたのは、その頃にはハイパーインフレによって円がほぼ無価値となり、新しく中央銀行が設立されるかもしれないって想像を込めて新を付けてます。w
旧銀行券は使用不可。回収へ
紙幣や硬貨の現金は使用できなくなり、銀行でデジタル通貨カードに両替することになります。国民生活に大きく影響することなので、銀行だけでなく、駅やコンビニにも両替機を置いたり、自販機型の機械も必要かもしれません。これにはかなりコストがかかりそうです。
確定申告が無くなる
全てがデジタル化すれば、徴税も自動化できるのではないかと思います。もちろん今の複雑すぎる税制では無理がありますが、もっとシンプルな税制に変えることで、かかっていたあらゆるコストが削減されてゆくことを期待します。
たとえば消費税の場合、通常は消費者が商品代金と消費税を商店に渡します。商店は預かった消費税のうち、仕入などで支払った消費税を差し引いて、国と地方に納めます。ただ現在の税制では規模などで課税/非課税事業者であったり、選択している方式によっても計算式が変わるので、これを自動化するのは不可能でしょう。なので大大大改正くらいの税制改正が必要そうです。他の税も同様です。
とても非現実的ですが、全てがもっとシンプルならいいのに…と時々思います。
おわりに
こうなったら面白いなーって重いながら書いていたら、こんなに長くなってしまいました。(^^;;) 現実問題としてはかなりハードルが高いと思うので、実現したとしても一部分くらいでしょう。
2050年、体内に埋め込んがICチップで支払いをする若者が、スマホでしか支払いできない年寄りを見て、「支払いするのに5秒もかかるなんて長すぎー」って言っているかもしれませんね。